文化遺産を活用した地域活性化に係る取組の設計(デザイン)支援について

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地域文化遺産の観光資源再価値化(活用)に関して。

有形文化財、無形文化財、記念物、文化的景観などの登録文化遺産および未登録文化遺産について、各地観光協会、観光課の皆様、うまく資源価値として活かしていますか?
地域内に文化庁指定の登録文化遺産がある、地域行政で指定している登録文化遺産がある、何も指定されていないが、歴史が古い未登録文化遺産があるなど、探すと様々なものが出てきます。また昭和期には「国指定重要文化財」や「天然記念物」という折り紙がつくことでツアーバスなどの集客ができた記憶があるかと思いますが、現代ではその言葉ではままならず、新たな指定を求めて世界遺産や日本遺産などに期待をしていないでしょうか?

地域の人へ伝える文化遺産の価値。

1950年(昭和25年)に文化財保護法が制定されて以降、1973年(昭和48年)のるるぶ創刊に始まり、1978年(昭和53年)〜1984年(昭和59年)にかけて行われた国鉄「いい日旅立ち」キャンペーンの影響もあり、旅行ブームが訪れます。またバスツアーなどでもガイドがしやすいという理由も後押しして、指定文化遺産は使われた経緯があります。

現地では登録文化遺産の意匠をあしらったお土産などの開発と販売で潤っており、一部の観光地ではこの状況はまったく変わっていません。また文化遺産のある地域の方の多くは、その文化遺産がなぜそこにあり、どのくらいの価値のあるものか、比較対象が少ないために図りしれていない現実もあります。

価値の伝え方としては様々な方法が考えられますが、小冊子などを作って配布したり、実写映像を作ってみてもらったり、カルタや双六などを作っていた例もあります。ただし同じ方法でもコンテンツの組み立て(編集)、演出、表現方法などによって伝わり方が変わることは、ブラタモリの例を見ればおわかりいただけると思います。

コンテンツ産業の時代考証などに携わるノウハウを活かせるイツノクラ。

史料を調査していくと、ときに不都合な真実へたどり着くこともあります。歴史が古いと思われていたものが、実は江戸中期頃の捏造だったり、実在しない人物があたかも実在しているかのごとく語られたり。しかしコンテンツ産業側ではそのようなことは日常的ですので、柔軟に対応するすべを得ています。

そうした歴史もまた地域の特徴でもあるし、価値にも変わります。今までは過去の威光にスポットを充てることが多かった観光資源広報ですが、歴史遺構については切り口の多様性が目立つようになり、地形(地学)であったり造成方法(土木学)であったり、建築方法であったり(建築学)、造形・装飾であったり(芸術学)…と、従来民俗・文化学的見地が強かった切り口が見事に広がっています。またこうした切り口をベースに創作や自費電子書籍出版などへつなげる動きも見られることからも、紋切り型での広報だけでは魅力が伝え難くなっていることも時代の流れです。
(下図:創作同人誌の一部例)

歴史と関連性の深いデザインで、六次産業やお土産パッケージデザインを提案。

史料調査を元に様々なケースで初期設定を制作し、その設定を元にしてパッケージデザインを起こします。たとえば上田市のケースを例にあげてみます。

六文銭

上田市といえば大河ドラマ『真田丸』で脚光を浴びた真田氏が活躍した地。主な活躍の時代、実は江戸中期〜後期にかけて。下記がイツノクラで行った調査メモの一部を抜粋しました。

冬の陣図より(東京国立博物館の図を復元)
大阪冬の陣の合戦図屏風の復元プロジェクトにより復元された。真田丸の出丸部分を拡大

江戸中期の1672年難波戦記、上田軍記の出版および講談が始まると華々しく真田幸村が誕生。六文銭や真田赤揃えはこの頃に完成し、その後江戸末期から明治・大正にて、真田十勇士が誕生します。明治で信濃に忍者が居たという説がこの頃完成しました。江戸末期から明治に関しては佐久間象山など国学者を多数排出していることも影響している可能性があります。
史料では大坂冬の陣で真田軍は赤揃えでは描かれておらず、六文銭ではなく丸印、戦旗に家紋を染め抜くというようなことはされていないことが確認できます。しかし関ヶ原の合戦で徳川軍本陣まで近づくことができ、上田城でも徳川軍を手こずらせた一族であることがとりあげられ、創作の対象として武勇を演出でき、感動を与えることができると考えられたことで脚光を浴び、その名作は現代でも語り継がれるほどに愛されています。

国文学研究資料館・信濃国松代真田家文書など参照
調査・資料作成:青山信子

こうして江戸中期から愛されてきた六文銭。このモチーフを上田産の林檎と高原、塩田平、千曲川のイメージを重ね合わせたパッケージベースに落とし込み、展開サンプルを提案しました。六文銭のイメージは真田家家紋としての印象が強く、なかなか大胆にアレンジできなかった印象があるのですが、史料をベースに調査したを結果、物語設定の一部であることがはっきりしたので、意匠として採用を提案します。

観光資源リブランディングについて。

過去の資料からまとめる地域の設定、共通に使えるベースデザイン、ガイド育成資料を制作。

今まで地域の史料はすでに整理・蓄積されていると思います。今までも活用されて来ていたでしょうが、広報の基準に今まではマスメディアが中心となっていたはずです。そのため面としてではなく、点としての紹介が中心でした。その流れで少し変わったのが、地域を面としてとらえ点と点を結ぶルートの設定。観光散策ルートマップなどがそれです。

文化財紹介の切り口を多くする必要性。

歴史文化コースや自然観察コースなどの切り口で作られている事が多いルートマップ。現地配布のマップは沢山の種類を作ることはままなりませんが、ネット上にウェブページやPDFとして掲載すれば、多用な切り口の情報を提供することが可能です。多言語化についても同様に対処できるでしょう。

ではどのような切り口を用意すればよいのか? この部分を文化財記録や史料を元に分析し、企画提案していくことがイツノクラの得意とすることです。

切り口となる様々な企画が考えられますが、基本的な設定史料を作り込むことで応用が効くようになります。ちょうど映画やアニメーション作品などの初期設定を作り込むイメージです。人物から想定するもの、地域を舞台として想定し、写真映えする場所、地域独特の場所(道祖神やほこら、道形など)、装飾や料理などを設定に落とし込むことで、様々なシードストーリーとともに観光資源を様々な角度から彫り込み、文化財とともに相乗効果を上げる価値観の再定義(リブランディング)を行います。

見慣れていると素通りしてしまうような場所も、初期設定のシードストーリーに沿えば、こういったシーンではこの場所が似合うというような、ロケハン的な視点で地域を見ることができます。イベントだけがストーリーシーンではないので、視点を変えるだけで地域内には価値化できていない風景や、文化財指定をされていないだけで、切り口から見たらものすごい価値のあるものもまだまだ眠っています。残念ながら再開発で取り壊されてしまったり、経年寿命で見えなくなったりするものも出てくると思いますが、こうしたまだ見えない文化財を発見していくことも必要だとイツノクラは考えています。

※参考:アニメーション作品の設定資料集

ベースデザイン

過去史料を分析していると、いつの時代に何が流行ったのかなどが明らかになってきます。その時代の背景をもう一度読み解き直し、地域のシンボルとなり得る意匠を再構築していきます。こうしてできた意匠を公的な機関などが権利を取得し、地域内の多くの関係者に使ってもらえるベースデータとして提供することで統一されたブランディングに近づくことができます。

参考:六文銭をモチーフにした意匠(デザイン:伊藤あすか)

たとえばラッピングに。包装紙やお土産パッケージに…。ベースデザインがひとつあると、統一されたイメージを作ることが可能です。

これらを踏まえたガイド育成資料

ガイド育成資料については、文化財の歴史はもとより、地域のお土産・食文化・装飾文化などまで踏み込みつつ、意匠の来歴や扱う店舗の来歴なども同時にガイドできるような資料を作り込むことで、地域内のお土産需要の向上を狙う役割もあります。(上田市柳町参考)

上田地域の通史
上田地域の通史インフォグラフィックス原稿(調査・制作/青山信子)

同時に学生の地域活動などにも力を入れることで、声の収集と発信、再編集が可能となります。これらを効率よく再発信することで、再訪問需要のきっかけをつくる仕組みを構築します。こうした情報を元に、ガイド資料のアップデートを定期的に行い、情報の陳腐化を防ぎつつ文化財の価値を伝承します。こちらも弊社イツノクラが協力する地域のウェブマガジン「うえだナビ」の活動を参考にしていただくことで、地域内でどのような活動補助が必要か、効果測定はどのように行うことで報告書の内容を充実化できるかなど想定しやすくなると思います。
※うえだナビは2020年3月にリニューアルします。

※ガイド資料は基本的にPDFにて作成・納品します。

観光と持続可能な開発目標
〈文化の価値・多様性・遺産の保護〉
観光と文化は大きな関連があり、観光の発展は文化的価値の創造や文化遺産の保全に良い影響をもたらします。例えば、観光客が多様な文化を持つ人々と意義ある出会いをすることや、文化的に重要な建物の修復や伝統文化の復活に寄与することにつながります。また、観光は文化が社会経済的に発展することに重要な役割を果たします。しかし、文化遺産の毀損や文化的な習慣への解釈の誤解を防ぐために、適切に文化観光を推進していかなくてはなりません。
合同会社イツノクラは、この観光庁の趣旨に賛同し、SDGsゴール・ターゲット№8・11・12 の分野において史料調査・企画・デザインで、地域文化遺産の保護と観光資源開発サポートをします。